栢とご飯。
朝の柔らかな日差し……なら良かったのだが今は夏。鋭い日差しに半ば叩き起こされるようにむくりと起き上がる。
「うう、眩し……」
寝覚めは悪い方の栢。大体は後輩くんが電話で起こしてくれるのだが、今日は用事がありそんな暇もなかったようだ。のそのそと布団の海を這いずり出て顔を洗いに行く。
さて、今日の朝ごはんは何にしようか?
台所のきちんと整頓されたラックをゴソゴソと漁り、一つの袋を見つけたようでそれを手に取り今度は冷蔵庫に向かう。取り出したのは牛乳と卵、それからバター。
ボウルに袋の中の粉を全て入れ、几帳面に測った牛乳を注いで卵も割り入れる。そして白と黄色を完全に一つになるまで混ぜ合わせる。程よい緩さの生地が出来たところでフライパンを火にかけ、温めて一度濡れ布巾で冷ます。
そうして全ての準備が出来たところで、再びフライパンをコンロに戻し、淡い黄色生地をそっと垂らして広げていく。初めはすんとも言わなかった生地がだんだんと気泡を吐き出し、フツフツと優しい甘い匂いを沸き立たせる。
少し待ち縁が固まってきたことを確認すると、そっとフライ返しを差し込みぐるりと一周させた。そのままフライパンを傾けてひっくり返そう……としたのだが、少し形が崩れてしまった。まあ、味にはそこまで問題は無いだろう。
そしてもう数分待って竹串を刺し中まで火が通っていることを確認すると、すでに用意しておいた皿にホットケーキを滑らせた。その調子で2枚目を焼き上げる頃には、部屋中に優しく柔らかな甘い香りが満ちていた。
そうして焼き上げたホットケーキとバターを持ってリビングに行き、テーブルに並べて「いただきまーす」と言う。プラのナイフで4つほどに切り分け初めは何もつけずに一口頬張る。ふわふわの優しい甘みを感じる生地、今日の日差しもこれくらい優しければな、なんて考えながら食べ進めたところではっと何かに気がつく。
慌ててスマホでホットケーキの写真を取り、誰かにメッセージと共に送付したあと、安心した様にまたもぐもぐと食べすすめる。2枚目は室温に戻したバターを乗せ、甘みと塩気の調和を楽しむ。心なしかいつもより顔も緩んでいるような、元からこんな顔だったような気がしなくもない。
「ご馳走さま」
食べ終わったようで食器を下げ、一日の支度を始める。
彼にとって今日はどんな日になるだろうか?
あとがきなど
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